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最高裁判所第三小法廷 昭和45年(オ)342号 判決

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人木上勝征の上告理由第一について。

所論の点に関し原判決が適法に確定した事実関係、右事実関係のもとにおいてした判断は次のとおりである。すなわち、被上告人は、昭和二九年五月六日訴外小山幸三郎からその所有する原判決別紙目録三記載の家屋(本件家屋)を買い受けるとともに、小山が本件家屋の敷地として訴外金子故彦から賃借していた同人所有の同目録二記載の土地(本件係争地)を含む同目録一記載の土地(本件宅地)の賃借権を金子の承諾をえて譲り受け、同年九月一日頃から本件家屋に居住して本件宅地を占有し、同年一〇月一一日本件家屋につき所有権移転登記手続を経由したもので、被上告人は、本件家屋の右登記により本件宅地についての賃借権をもつて第三者に対する対抗力を有するに至つたものというべく、一方小山は、昭和二八年四月頃同人が金子から賃借していた本件係争地附近の土地の賃借権をその範囲を定めず上告人ら被承継人永嶌励に譲渡し、金子もこれを承諾し、励は、昭和二九年六月頃本件係争地上に右目録四記載の建物(本件倉庫)を建築所有してその敷地部分の占有を開始し、その後金子から本件係争地を含む右目録一記載の(三)の二一二番地の六の土地を譲り受け、昭和三九年七月三日その所有権移転登記手続を経由したものであるが、前記のとおり被上告人が本件宅地の賃借権につき第三者に対する対抗力を取得した以前に励が小山から譲り受けた本件係争地の賃借権につき第三者に対する対抗力を備えるに至つたことについてはなんら主張・立証がないから、結局、励は、本件係争地の賃借権またはその所有権をもつて被上告人に対抗できず、したがつて、被上告人は、その有する右賃借権に基づく妨害排除請求権によつて、励に対し、本件倉庫を収去してその敷地部分を明け渡すことを求めることができるというのである。原審のした右判断は正当として首肯するに足り、原判決に所論違法の点はなく、論旨は採用することができない。

同第二について。

本件記録に徴すれば、原判決の過程に所論の違法は認められないから、論旨も採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 下村三郎 裁判官 松本正雄 裁判官 飯村義美 裁判官 関根小郷)

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